2033年に空き家率は30%に拡大するとの試算も
総務省の住宅・土地統計調査(2013年)の試算によると、すでに全国の空き家は約820万戸(空き家率は13.5%)に達しています。今後、人口減少への対応や空き家の活用、中古住宅流通市場の整備が進まない場合、野村総研のリポートでは33年には全国で空き家が約2150万戸、空き家率は30.2%にまで拡大すると試算しています。空き家増加への対策はもはや待ったなしの課題となっています。
空き家の現状
〇 空き家の総数は、この10年で1.2倍(659万戸→820万戸)、20年で1.8倍(448万戸→820万戸)
〇 空き家の種類別の内訳では「賃貸用又は売却用の住宅」(460万戸)、「その他の住宅」(318万戸)
(※)「その他の住宅」この10年で1.5倍(212万戸→318万戸)、20年で2.1倍(149万戸→318万戸)
「その他の住宅」(318万戸)のうち「一戸建て(木造)」(220万戸)
出典:平成25年度住宅・土地統計調査(総務省)「空き家等の住宅に関する主な指標の集計結果について」
既存住宅流通推移(国土交通省)
既存住宅流通量は、平成25年で約17万戸となっている
全国版空き家・空き地バンクの構築
国土交通省では、空き家・空き地などの流通活性化に向けた取り組みを積極化していますが、2017年度は*「全国版空き家・空き地バンクの構築」と「地域の空き家などの流通モデルの構築」を実施しています。
具体的には、
(1)需給のミスマッチの解消や新たな需要の創出などにより、空き家・空き地などの流動性を高め有効活用を推進する。
(2)全国の空き家・空き地などの検索が可能な全国版空き家・空き地バンクの構築、空き家・空き地などの流通促進のため、先進的な取り組みを行う団体などへの支援を行う――という方針を掲げている。
新たな住生活基本計画(全国計画)(平成28年3月18日閣議決定)<既存住宅・空き家関連施策について>
課題と今後
- 少子高齢化・人口減少の急速な進展。大都市圏における後期高齢者の急増【高齢化問題】
後期高齢者:2010年約1,419万人 →2025年約2,179万人 - 世帯数の減少により空き家がさらに増加【空き家問題】
2013年約820万戸(賃貸・売却用等以外:約320万戸) - 地域のコミュニティが希薄化しているなど居住環境の質が低下
- 少子高齢化と人口減少が、1)高齢化問題 2)空き家問題 3)地域コミュニチィを支える力の低下といった住宅政策上の諸問題の根本的な要因【少子化問題】
- リフォーム・既存住宅流通等の住宅ストック活用型市場への転換の遅れ
- マンションの老朽化・空き家び増加により、防災・治安・衛生面等での課題が顕在化する恐れ【マンション問題】
新しい計画の目標(計画期間:2016年度~2015年度)<居住者からの視点>
目標1 結婚・出産を希望する若年世帯・子育て世帯が安心して暮らせる住生活の実現
- 民間賃貸住宅の活用
- 公的賃貸住宅への入居支援
- 持家の取得支援
- 三世代同居・近居の促進
目標2 高齢者が自立して暮らすことができる住生活の実現
- 高齢者向けの住まいや多彩な住宅関連サービスのあり方を示した「新たな高齢者向け住宅のガイドライン」を策定
- 需要に応じたサービス付き高齢者向け住宅等の供給や「生涯活躍のまち」の形成
- 公的賃貸住宅団地の建替え等の機会をとらえた地域拠点の形成
- リバースモーゲージの普及による高齢者の住み替え等の資金の確保 等
目標3 住宅の確保を特に配慮する者の居住の安定の確保
- 空き家の活用を促進するとともに、民間賃貸住宅を活用した新たな仕組みの構築を含めた住宅セーフティネット機能を強化
- 公的賃貸住宅の適切な供給・管理 等
目標4 住宅すごろくを超える新たな住宅循環システムの構築
「住宅購入でゴール」いわゆる「住宅すごろく」を超えて、既存住宅が資産となり、次の世代にも承継される「新たな住宅環境システム」の構築
⇒「資産としての住宅」への転換、リフォーム投資の拡大・住み替え需要の喚起
⇒人口減少時代の住宅市場の新たな牽引力
- 建物状況調査(インスペクション)、住宅瑕疵保険等を活用した品質確保
- 住宅性能表示、住宅履歴情報等を活用した消費者への情報提供の充実
- 住みたい・買いたいと思うような既存住宅の「品質+魅力」の向上(外壁・内装のリフォーム、デザイン等)
- 既存住宅の価値向上を反映した評価方法の普及・定着
- 資産として承継できる長期優良住宅等の良質で安全な新築住宅の供給 等
目標5 建替えやリフォームによる安全で質の高い住宅ストックへの更新
- 耐震性を充たさない住宅の建替え等による更新
居住されている住宅のうち、耐震性を満たさない住宅:約900万戸 - リフォームによる耐震性・耐久性等・省エネ性の向上と適切な維持管理の促進
- 投資意欲を刺激するリフォーム(健康増進・デザイン等)の促進
ZEHセールスアドバイザーとの提携 - マンションの適切な維持管理や建替え・改善の促進
目標6 急増する空き家の活用・除去の推進
- 良質な既存住宅が流通し、空き家増加が抑制される流れの創出
- 空き家を活用した地方移住や二世帯居住等の促進
- 古民家等の再生・活用や介護・福祉・子育ての支援施設、宿泊施設等の他用途への転換
- 防災・衛星・景観等の生活環境と悪影響を及ぼす空き家の解体・撤去の推進
目標7 強い経済の実現に貢献する住生活産業の発展
- 地域経済を支える地域材を用いた木造住宅の供給促進、設計者・技能者の育成、伝統的な技術の承継・発展・CLT等の部材・工法等の技術開発を推進
- 住宅ストックビジネスの活性化、多様化する住生活産業に対応した担い手の確保・育成
*既存住宅の維持管理、リフォーム建物状況調査(インスペクション)、住宅ファイル、空き家管理 等 - 子育て世帯・高齢者世帯など幅広い世帯のニーズに答える住生活関連の新たなビジネス市場の創出・拡大、住生活産業の海外展開を支援するなど我が国の住生活産業の成長を促進する
家事代行、食事宅配、ICT対応型住宅、遠隔健康管理、IoT住宅、ロボット技術 等
(※)ICTとは「Information and Communication Technology」の略語で、「情報伝達技術」や「情報通信技術」などと訳されます。「Communication」というワードがあるように、「ヒトとヒト」「ヒトとモノ」それぞれの間で情報や知識を共有することを意味しています。
目標8 住宅地の魅力の維持・向上
- スマートウエルネスシチィやコンパクトシチィなどのまちづくりとの連携、交通・買い物・医療・教育等の居住者の利便性向上
- 住宅団地の再生・その機会をとらえた高齢者・子育て支援施設等の地域の拠点形成
- 良好な景観の形成、豊かなコミュニティの維持・向上
- 密集市街地の改善設備や無電柱化の推進等による居住者の災害時の安全性の向上
空き家問題への対応
適正に管理されない空き家等が周辺の生活環境に深刻な影響を及ぼしていること等を背景に制定された、「空き家等対策の推進に関する特別措置法」(平成26年法律127号)(議員立法)が平成27年5月26日に全面施行され、市町村が空き家対策を進める枠組みが整った。
市町村による空き家等対策計画の策定等
63市区町村が策定済、平成28年度策定予定422市区町村(平成28年3月31日時点)
空き家等及びその跡地の活用に対して、居住環境の整備改善等を図る観点から、空き家の活用・除却を促進する地方公共団体の取組を支援(社会資本整備総合交付金)。
- 民間事業者等と連携した総合的な空き家対策への支援
- 専門家等と連携して実施する空き家対策の先駆的モデル事業の支援