今回の案件は、Iさんのご自宅でも買主も同席の上、売買契約を締結したのですが、その際、お二人は初めてお会いしたのにもかかわらず、とても仲良さそうにお話をされていたことが印象に残っています。

最終的な売買金額は10万円以下となりましたが、Iさんからは「とても良い方に購入していただけて良かったです」、買主からも「とても良い方からお譲りいただくことができました。大切に使わせていただきます」とおっしゃっていただきました。きっと不動産が結び付つけたご縁だったのでしょう。これからその別荘地に買主の建物が新築されることが楽しみです。

実際に別荘地の土地の売却活動を行ってみて、改めて需要の少なさを痛感しました。別荘地や雑木林でなければ、ソーラーパネル用地や資材置場、車両置場として売却できることもありますが、別荘地でその上、地方となってしまうと、お問い合わせが少なくなり、販売期間も長期にわたってしまうのが現状です。うけ

Iさんの物件は、私が手掛けた最初の地方案件となりましたが、その後は栃木県日光市や北は北海道の原野、南は沖縄県の山の売買も行うようになりました。他にも別荘地としては、群馬県の嬬恋村や長野原町、長野県佐久市、宮城県蔵王町など多数の地方案件も対応しております。中には売買代金が1円だったときも何回かありましたし、時には不動産をタダで差し上げますと告知したこともありました。ただし残念ながら受け取っていただける方は現れず、最終的には他の優良物件と抱き合わせで売却したこともあります。

別荘地を含む地方案件における売却時の注意点は次の通りです。

  • 別荘地の売買には法律(森林法)や各種条例などにより、契約前の届出や所有権移転後の届出が必要となる場合があるため、制度に詳しい不動産会社を選ぶことが重要。
  • 不動産業界は一般的にアナログ派が多い業界のため、地元不動産会社では今でもインターネットの不動産ポータルサイトを使用していないところがかなりあることを認識しておくこと。 

特に②については、その不動産会社に売却を依頼してしまうと、その不動産会社の知り合いにしか情報を公開されず、いつまでたっても売却できないということが多々あります。そのため不動産の売却時には、依頼した不動産会社に対して「どのサイトに登録して、どのような内容が掲載されているのか」なども確認しておくことをおすすめします。

もっとも、一番地域に精通しているのは、やはり地元不動産会社の担当者であることに他なりません。そのため私も積極的に地元不動産会社とは情報交換をし、買主を探していくようにしています。物件の現地調査などの際には必ず地元不動産会社を数社回るようにしています。早期の成約には、あらゆる手段を試みることが大切なのです。私が対応した他の地方案件では、隣に住む方に売却したり、お願いして引き取ってもらったり(隣の方が引き取るにあたり諸費用を所有者が負担したときもありました)、他の優良物件と抱き合わせたりして売却したこともあります。

売れない不動産をお持ちの方は、どのような方法で手放すか、いつ手放すのかをよく考えていく必要があります。私のもとには毎週地方のお客様より「タダでもいいから、それでもダメならお金を支払ってでもいいから何とか処分したい」というご相談がたくさん届いております。そしてこのようなご相談は、日を追うごとに増加しているのが現実です。

 

田中 裕治(一般社団法人全国空き家流通促進機構代表理事)